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グーグル社での活動について


「グーグル社、ティク・ナット・ハン禅師の智慧に教えを請う」(2013年9月5日 ガーディアンの「ビジネスの持続可能性」紙、テクノロジーとイノベーション特集より。元記事は、インターネットより転載 http://bit.ly/1kgxSST

─ 世界的なテクノロジー企業の数々が、マインドフルネスの力と 瞑想に出会い、持続可能性と幸福のテコ入れを始めた ─

今月グーグル本社を訪れるティク・ナット・ハン禅師、ナンバーワンを追及せず「無願(目的依存を手放すこと)」を養うことを説く。

◆グーグルをはじめとする、世界でもっとも勢いのあるテクノロジー企業の多くが、この87歳のヴェトナムの禅僧にとりわけ注目するのは、いったい何故だろうか?

ティク・ナット・ハンは、世界の何十万に及ぶ信奉者たちに「タイ」という愛称で知られている。彼の教えがどのように自からの組織に思いやりと効果をもたらすか、その可能性を探ろうとあらゆる企業が興味津々なのだ。

今月後半タイはカリフォルニアのグーグル本社に招かれ、まる一日の瞑想実践の時間を提供する。これはマインドフルネスの実践が社会のメインストリームに取り入れられつつあるしるしだ。

タイの著書はアメリカ国内だけで200万冊以上売れている。のみならず彼は、アメリカに本社を置くシリコンバレーのおもなテクノロジー関連企業の代表20人以上と会見し、今この瞬間に生きる技についての智慧を伝授している。

タイが企業幹部たちと会う際には、すべてのいのちの相互の連携と相互依存への深い理解のありかた、企業における仕事の日常、製品の設計、世界を変化させるテクノロジーのヴィジョンのありかたなどについて、マインドフルネスをより良いかたちで統合していくための現実的方策について、話し合うはずだ。そうした会合は、歩く瞑想の実践で締めくくられるだろう。

数名の世界的なリーダーが、過去50年にわたってタイの活動を評価してきた。現世界銀行総裁であるジム・ヨン・キムは、「タイの実践は、苦しんでいる人びとに対する痛切な思いと慈悲を呼び起こすものだ」と述べている。また1967年、マーチン・ルーサー・キング牧師は、ヴェトナム戦争終結を目指したタイの活動を評価し、彼をノーベル平和賞に推挙した。

タイの受賞は、「平和に立脚した美と愛の教えに再び人類の目を開かせ、公正と調和による新秩序への希望を蘇らせるだろう」とキング牧師は述べている。

タイが出家したのは72年前。その年齢にもかかわらず、アジア地域で立て続けに行われた約3か月のリトリートツアーからまもなく、現在同じく3か月の過酷な北アメリカツアーの真っ最中である。

世界でもっとも急成長している修道会、それがタイの僧と尼僧の弟子たちによるネットワークだ。一週間単位のリトリートは、トロント北部、ニューヨーク、ミシシッピやカリフォルニアで、それぞれ定員1000名を超えて行われ、しかも数日のうちにチケットは売り切れる。

飽くことを知らない現代の経済システム

タイは警告する。貪欲極まりない私たちの経済システムが環境・社会に与えたダメージによって、この文明は崩壊寸前にあると。かわりに彼は、(彼いわく私たちが物質主義の祭壇に生贄として捧げた)真の幸福に心を傾けて取り組む、という展望を提示する。

タイの教えの源は、瞑想の実践とマインドフルな生きかたによって、未来への不安と過去の心の傷を手放し、苦しみを変容させることである。

私たちの消費への依存こそ心の苦しみの隠ぺいの明らかなしるしだと指摘し、それとは反対に痛みのただなかに入り、乗り越えていくように説く。

さらに、ビジネスを通して走り続ける資本主義の速度を落とさせるためには、「利潤こそが成功の証であるという偏狭な思い込みは根本的に間違っていた」と企業のリーダーたちが認めるしかないという。

ビジネス社会には、根本的な意識転換が必要

そのためには、スピリチュアルな原理を現場の日常に統合する重要性を認識し、企業社会の意識の根本的な転換をはかる必要がある。

キャットスキル・マウンテンでの「苦しみの扱いかた」をテーマにした先週のリトリートの終わり、ガーディアン紙からインタビューを受けたタイの言葉を引こう。

「幸福に対する考えの再検討が必要です。勝ったとき、一番になれて初めて幸福がやってくる、人はそう考えます」

「けれど、その保証はありません。より多くのお金を手に入れたからといっても、苦しみは変わらないからです。幸福でない、〈だからこそ〉人は競争するのです。瞑想は、この苦しみをやわらげます」

「人より抜きんでて、一番になって初めて幸福になれる、多くの人がそう思っています。幸福になるのに一番になる必要などありません」

「生活やビジネスにスピリチュアルな次元は欠かせません。そうでなければ、仕事や日常で起こる苦しみに対処することができなくなります」

マーチン・ルーサー・キング牧師との出会い

公民権運動のリーダーとしてのキング牧師が、ヴェトナム戦争反対を決断した要素として見逃すことのできないタイとの出会い。タイ自身がそれを振り返って言う。オバマ大統領は、「私には夢がある」のキング師の歴史的スピーチ50周年を記念して先週祝賀会を催したが、重要な点を忘れていたと。

「オバマ大統領は自由の鐘を鳴らせと言いましたが、彼は外側からもたらされる政治や社会的自由に触れただけでした。しかし集会、言論、著作などの自由を手にしても、自分の怒りや恐れなどからの内なる解放を実現しなければ苦しみは終わりません」

キング牧師のヴィジョンの中心には、「愛のコミュニティ」の発展があった。タイは心血を注いで、世界中に千以上の一般人の瞑想実践者による「サンガ」を作ってきた。ビジネス社会のリーダーたちが、会社の中でこのコミュニティの精神を形成し、変化を起こすことは可能だろうか?

職場でマインドフルネスと瞑想の実践を

企業にマインドフルネスと瞑想の実践を導入することで、破壊的な働きかたをやめ、すべてのいのちの相互依存を認識することができるようになる、タイはそう確信する。

「瞑想の実践によって、ビジネスの苦しみを軽減することができます。それだけでも、十分な恩恵です。社員が幸せであればビジネスも躍進するからです」

「自分が関わるビジネスが環境に問題を与えているとき、瞑想の経験があれば、どう工夫すれば自然への害を軽減できるのか、よい考えが浮かぶでしょう」

「瞑想は苦しみを静めます。そしてさらに深い洞察と、あなた自身と世界に対する正しい見方を与えます。多くの智慧が集まれば、世界の苦しみをやわらげるような方向にビジネスを改善しようという欲求が自然に生まれるでしょう」

職場にマインドフルネスを導入すれば、社員が過重な労働を負うことが防げる、とタイは指摘する。しかしリーダーがまず見本を示すべきだとも。

ビジネスリーダーは、まず自分を大切にすること

企業の幹部の多くが、持続可能性の重要性について公言するようになった。しかしタイは、彼らが管理する組織内部の価値観に、その原理を導入する者はほとんどいないという。

「彼ら(幹部)が企業に自分のすべての時間をつぎこむなら、自分や家族に使うための時間はなくなります。彼ら自身の心が落ち着き、慈愛に満ち、思いやりと理解がもてれば、ビジネスにもプラスになると認識すること、それが大切なのです」

コンピュータによるスピードアップとつながりの拡大によって、立ち止まって内省したり教えを受け取る余裕をもつことがますます難しくなっているのは、ある部分仕方がないことだろう。

無願(目的志向を手放すこと)のパワー

タイは、次々にプロジェクトを創出する代わりに、「無願」の極意を身に着けることの重要性を説く。

「人は幸福が未来にあると信じています。無願というのは、走ることをやめて今ここに幸福を見いだすことなのです」

「真の幸福は心の平和なしには実現しません。走り続けていてどうしてや安らげるでしょうか? 夢の中でさえ走っていては。これが現代文明なのです」

「この状況を逆転させねばなりません。あなた自身に戻り、大切な人や、自然に帰りましょう。電子機器はあなた自身から逃げ出す道具なのですから。インターネットやビジネス、企画、などにわれを忘れて、みんな自分と一緒にすごす時間がないのです。大切な相手を慈しむ時間ももちませんし、母なる大地に身をゆだねて癒されることもしません。私たちは、自分、家族、自然から逃げだしているのです」

ビジネスリーダーたちはおしなべて、プレッシャーに直面する自身の悩みを公言できない。しかし、有名企業の幹部のなかには、タイの懸念に賛意を表明する者が何人かいる。

リーマンブラザーズ元最高財務責任者のエリン・キャランは、銀行破たんの数か月前に辞任した。本年初頭彼女は、自分が仕事によっていかに疲弊しつくしたかを、思い切った寄稿で告白している。

「仕事を辞めて打ちのめされました」、彼女はニューヨークタイムズ紙に寄せた。「気を取り直して踏み出すことさえできませんでした。自分の業績に照らして現在の自分をどう評価すべきか、途方にくれたのです」

「仕事に追われまくっていたころ、週末は翌週のための再充電に費やしていました。家庭や友人や結婚生活よりまず仕事だったんです。それもほんの数年前に終えましたが」

テクノロジーの二面性

テクノロジーの破壊的な威力を懸念するいっぽうで、タイは、テクノロジーのもうひとつの側面に目を向け、そのパワーを良い方向に生かせるという。

だからこそ、タイはテクノロジー企業の代表たちに出会うたび、消費者に調和のとれた生きかたを取り戻させるようなアプリやデバイスの開発に専心するよう要請する。

「必要なのは目覚めです。グーグルなどの企業でお話しするときには、彼らの知性と良心を生かして、消費者が自分に戻り自分を癒すのをうながすような機器をつくりだすよう、提案するつもりです」

「そういったツールを拒否したり、廃棄する必要はありません。それらを良い方向に生かせばいいのです」

彼が挙げたのは、たとえば怒りが湧き上がるたびにそれを静めるようなアプリの開発、彼自身のデザインによる、文字盤に数字の代わりに全部「今」としるした腕時計などだ。

グーグルがこの仏教僧に依頼した法話のテーマは、(タイがマインドフルネスの実践によってすべて可能になるはずと言う)意志、イノベーション、洞察などである。

タイはすでに2011年にグーグルに招かれているが、それ以来マインドフルネスの実践は、このテクノロジーの巨人においておおいに活用されている。たとえば、「自分の内面の探索」という会社によるマインドフルネスの訓練プログラムに参加する従業員はますます増え、職場のあちこちに瞑想のための場所が設置されるようになった。

「生きとし生けるものと同じく、どうすれば自分たちの苦しみを変容できるか、グーグルの人たちは知りたがっています」とタイは言う。

「とても若く知性をもった従業員がたくさんいます。彼らはこの教えをよく理解し、しっかりと実践するでしょう。人にもそれを伝えられます。そしてそのための手段も持っているのです」

「だれもが良き働きをしたいと願っている、それがわかれば彼らの励みになります。私たちには残らず〈仏性〉があるのですから。曲がった状態にある道をよく見つめるなら、そこに他の道が見えてきます。つまり、苦しみをまっすぐに見つめれば、そこに幸福の道が見えるのです。これが四聖諦(四つの聖なる真理)の教えです。これを理解するのに仏教徒である必要はありません」

「私たちの社会に必要なのは、集合的目覚めです。それによって直面する危機から自分たちを救いだすのです。あなたの一歩一歩、一息ずつに、目覚めが訪れなければなりません。それが実践です。目覚めていれば、あなたが幸福の道にいることがわかります。あなたの苦しみが終われば、人が同じ道をたどるために手を差し伸べることができるのです」

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