top of page
ティク・ナット・ハンのことば

What Happens When You Die?
わたしが死んだらどうなるのですか?

「私たちはある日生まれていつの日か死んでいく独立した自己をもっていて、それが生きている間は変わらないと考えがちです。これは誤った考えで、この誤見をもち続けるかぎり、周りの人たちを苦しめ、他の種やかけがえのない地球に害を及ぼすことになるでしょう。こうして生きていても、私たちは自分の体に限定されておらず、先祖、子孫、そして全宇宙とインタービー(相互存在)しています。私たちに他から切り離されて独立した自己はありません。真の意味で、この身は生まれることも死ぬこともなく、すべてのいのちと相互に関係しあい、つねに変化しているのです。

 自分がどのように両親、兄弟姉妹、先生や友達に繋がっているか、あなたに見えますか。両親や愛する人たちの中に続いているあなたの体が見えますか。それを確かめるために年をとる必要はないし、ましてや死ぬ必要もありません。自分の継続する体を見るのに、この肉体の完全な消滅を待つ必要などないのです。ちょうど雲が、自分の継続する体を見るために、完全に雨に変わる必要がないように。あなたの雨、あなたの川、あなたの海が見えますか。

 今この瞬間に、自分の継続体を見るには、トレーニングが必要です。こうして生きている間に自分の継続体を見ることができたら、未来の自分の美しい継続を確かなものにするために、どうしたらそれを養い育てたらよいかが分かるでしょう。これがほんとうの生きる喜びです。肉体が滅びるときが来ても、そのとき、安心して自分の体を手放すことができるからです。

「私が死んだらどうなるのですか」という質問へのいちばんの短い返事は、あなたは死なないということです。これは真実です。なぜならば、死にゆく人の本質が理解できたら、死という出来事の意味がほんとうに理解できたら、死など存在しないということが、あなたには分かるはずです。死んで消滅するような自己などなく、あるのはただ変容だけなのです。


 マインドフルネスの練修によって、安心と安堵が得られます。そして、自分の中にある不生不死という本質に触れるとき、大安心と究極の平和が訪れます。これはあなたにも実践できることです。そうすれば限りない自由が訪れます。宇宙の体、神の体、涅槃の体に触れることができたら、あなたはもう死を恐れる必要はなくなります。これがブッダの教えの真髄であり、修行の成果です。喜びのうちに死んでいく人たちがいます。彼らはこの真実(洞察)に触れているからです。」
 

 

翻訳:池田久代

“The Art of Living: Peace and Freedom in the Here and Now”(2017)抜粋

Seeing Thay in the Sangha
サンガのなかでタイに会う

コロラド・リトリート「一人のブッダでは十分でない」の参加者と実践者へ

親愛なる友へ

 この手紙はマサチューセッツ総合病院から皆さまに宛てた二通目の手紙です。発病から一週間経った現在、治療は良好に進み、症状にも改善が見られています。皆さまの暖かく愛のこもった力添えに感謝します。このリトリートで、僧侶と在家が、心を込めて見事に実践を続けていることを知りました。この知らせを受けて、心から安堵しています。あの悲しく心配と落胆の入り混じった瞬間を体験したあとも、みんなが落ち着いてプラクティスを続け、未だかつて類を見ないほどの素晴らしいリトリートが実現したことは、これに勝る喜びはありません。今、皆さまがリトリートで感じておられる変容と喜びは、タイであるわたしだけでなく、全ての参加者に素晴らしい励ましと滋養を与えてくれるものです。わたしたちは今、サンガの力と奇跡を目の当たりにしているのです。皆さまのサンガが見事にタイの継続を果たしておられ、これから先のプラクティスについても、いささかの心配もないことを確信します。その昔、シュラーヴァスティー(舎衛城)のプラーセナジット王(波斯匿王)がブッダに語ったことばを思い出します。王はサンガを観て、まさにそこでブッダに出会ったといわれたのです。このリトリートで実現した成果の一つは、初めてサンガに参加した人たちも含めて、参加者全員がサンガのなかでタイに会うことができたということです。サンガには、ブッダや先師方の仕事を継続していく力が備わっているのです。このコロラド・リトリートをプラムヴィレッジ恒例の伝統行事とすることを提案したいと思います。すなわち、今後も状況が許せば、このサンガのみんながメンバーとしてここに集い、他の人々にダルマ(仏法)を伝えて欲しいという提案です。こうして、リトリートに集うすべての人が、タイの継続となるのです。この美しい継続がすでにここにあることを思い出すたびに、わたしの心は喜びでいっぱいになります。わたしはサンガに全幅の信頼を寄せています。タイの存在があろうとなかろうと、サンガは、必ずや、実践の奇跡を起こすことができると信じます。この提案について皆さまからの便りを心待ちにしています。
わが友と弟子の皆さまに心より感謝します。遠からずまた皆さまに会えますように。

 

愛と信頼とともに
タイより

​翻訳:池田久代
 

bottom of page