14のマインドフルネス・トレーニング(2022年改訳)

プラムヴィレッジの14のマインドフルネス・トレーニングは、菩薩行の実行のために定められた五十八の戒律の現代版です。このトレーニングは単なる教えではなく、現実の生活におけるマインドフルネスの実践です。マインドフルネス・トレーニングを学び、実践することが「インタービーイング」の本質を理解する助けとなります。

第1のトレーニング : 開かれた心

OPENNESS

 

 狂信と不寛容から生まれる苦しみに気づき、盲目的な崇拝や、あらゆる教義、理論、イデオロギーについて、たとえ仏教でも絶対視はしません。仏教の教えを、深い洞察と慈悲と理解を育てる導きとして受け止めます。それは闘ったり、殺したり、いのちを捧げるような教えではありません。あらゆる狂信はものごとを二元的かつ差別的に捉えた結果生まれることを理解します。すべてを開かれた視点から相互存在の洞察によって観るよう訓練を重ね、自分の心と世界に存在する独断と暴力を変容させます。 

 

 

第2のトレーニング: 執着しない見かた

NON ATTACHMENT TO VIEWS

 

 自分の味方への執着や認識の誤りから生まれる苦しみに気づき、狭い考え方を避け、一時的な見方に縛られないようにします。ひとつの視点に執着せず、学びと実践を通して人の経験や洞察を広く受け入れ、集合的な智慧から恩恵を受け取ります。私の今の知識は不変ではなく、絶対的真理ではないことに気づきます。慈悲の心をもって聴き、深く見つめ、知識を積むよりも思い込みを手放すことで、洞察が現れるのです。
  真理はいのちの中にあります。自分自身やまわりに存在する、どんな瞬間にも存在するいのちを見つめます。それは人生でいつでも学べるものです。

 

 

第3のトレーニング: 思考の自由

FREEDOM OF THOUGHT

 

 自分の見解を他者に押しつけることからくる苦しみに気づき、子どもをはじめ誰に対しても、自分の見かたを無理強いしません。そのために、権威、脅迫、金銭、 プロパガンダ、洗脳などの手段を使いません。人の独自性や、信条の選択、決定のしかたについての権利を尊重します。そして、愛のある話しかたと慈悲をこめた対話を通して、他の人が狂信や偏狭さを手放せるように助けます。

  

 

第4のトレーニング: 苦しみへの気づき

AWARENESS OF SUFFERING

  

 苦しみの本質への深い洞察が理解と思いやりを育てることに気づき、本来の自分自身に戻り、マインドフルネスのエネルギーによって苦しみに気づき、受け入れ、抱きしめ、耳を傾けます。消費することで苦しみから逃げたり、苦しみをごまかしたりせず、意識的な呼吸と歩く瞑想の実践によって、その苦しみの根源を深く見つめるよう、出来る限りの努力をします。
 苦しみの根源を深く知ることが、それを変容させる唯一の道であることを理解します。自分の苦しみを理解できて初めて、人の苦しみがわかります。直接会うこと、電話やインターネット、音声や映像などの手段によって、苦しんでいる人々に寄り添い、その人たちの苦しみが慈悲、安らぎ、喜びに変容するように助けます。

 

 

第5のトレーニング: 慈悲に満ちた健やかな生き方

COMPASSIONATE, HEALTHY LIVING

 

 真の幸福は、心の安らぎ、ゆるぎなさ、自由、慈悲に根ざしていることに気づきます。何百万もの人びとが飢え、いのちを落としていく一方で、自分の富を積むことはしません。また、多くの苦しみと絶望のもとになるような名声、権力、富や享楽を人生の目的としません。食べもの、刺激による反応、意志、意識状態という四種の栄養の取り入れ方を通して、心と体を養う方法を深く見つめます。賭けごとをせず、アルコール飲料、麻薬だけでなく、特定の ウェブサイトから、ゲーム類、テレビ番組、映画、雑誌、書籍、会話にいたるまで、体と意識や、組織や集団という集合的な体と意識にとって、毒になる製品を取りこみません。自分自身の体と意識、そして家族や社会や地球という集合的な体と意識に、慈悲や健康や喜びを保つような消費を心がけます。

 

 

第6のトレーニング: 怒りを世話する

TAKING CARE OF ANGER

 

 怒りがコミュニケーションを阻み苦しみをつくりだすことに気づき、怒りが起こったときはそのエネルギーを世話し、意識の奥底にある怒りの種に気づき、変容させていきます。怒りが湧いてきたときには、どんな発言もせず、行動も起こしません。そのかわりにマインドフルな呼吸や歩く瞑想を実践し、怒りを認め、抱きしめ、深く見つめます。怒りの原因は私の外ではなく、自分や相手の心の中にあり、苦しみについての誤った認識や理解の不足にあることを自覚します。すべてのものが移りゆくという真理を見つめれば、自分自身と怒りの原因と思っていた相手を慈悲の眼で見られるようになり、おたがいの関係の大切さがわかるでしょう。誠実な努力によって、理解と慈しみと喜びとすべてを受容する心をつちかい、怒りと暴力と怖れを少しずつ変容させます。また、他の人もそうできるように助けます。

 

 

第7のトレーニング:今ここの幸せにとどまる

DWELLING HAPPILY IN THE PRESENT MOMENT

 

 いのちは「今ここ」だけに存在することに気づき、日常生活のあらゆる瞬間に深く生きるトレーニングをします。散漫さから自分を見失ったり、過去の後悔、未来の不安、現在の貪りや怒りや妬みに押し流されないよう努力します。マインドフルな呼吸を実践し、今ここで起こっていることに気づきます。いかなる状況にあっても、自分の中とまわりに存在する清々しくすばらしい癒しの要素に触れながら、マインドフルな生きかたを学びます。そのようにして喜び、安らぎ、慈しみ、理解の種を育て、意識の変容と癒しに取りくみます。真の幸せは外的な条件ではなく、何よりも心の持ち方にあることに気づき、幸福の条件がここにじゅうぶんそろっていることを思い出せば、今この瞬間に幸せに生きられることを自覚します。

 

 

第8のトレーニング: 真のコミュニティとコミュニケーション

TRUE COMMUNITY AND COMMUNICATION

 

 コミュニケーションの不足がつねに分裂や苦しみにつながることに気づき、慈悲をもって聴き、愛のある言葉で話すようつとめます。真のコミュニティは、すべてを包みこむ力を備え、ものの見かた、考えかた、話しかたを調和させるという具体的な実践に根ざすことを知ります。自分の理解と経験を人とわかち合い、共通の洞察にたどり着くようつとめます。決めつけたり反応したりせずに深く聴き、コミュニティに不和を生み分裂を起こす言葉を使わないように気をつけます。問題が起こったときには、サンガにとどまって自分と相手を深く見つめるようにつとめ、自らの習慣のエネルギーを含む、問題をもたらしたあらゆる原因と条件をたしかめます。仲たがいのもとになったかもしれない自分のすべての言動に責任をもち、コミュニケーションをはかる余地を残します。犠牲者のようにふるまうことはせず、どれほど些細ないさかいについても、積極的に和解と解決の道を見いだすようつとめます。

 

第9のトレーニング: 誠実にやさしく話す

TRUTHFUL AND LOVING SPEECH

 

 言葉が幸せや苦しみを左右することに気づき、誠実かつやさしく建設的に話すことを学びます。喜びと信頼と希望を引き出す言葉のみを使い、自分の心と、人々のあいだに和解と平和を育てます。自分と他者の苦しみを変容させる話しかたと聴きかたにつとめ、困難な状況から抜け出す方法を見つけだします。個人的な興味から不確かな発言をしたり、人の関心を引きつけるような話しをせず、分裂や憎しみのもとになるような言葉を口にしません。人の欠点を陰で話さず、自分の見かたが正しいかどうかをたえず自問して、サンガの幸福と調和を守ります。状況を理解し変容させていこうとする言葉のみを使います。ふたしかな根拠にもとづいてうわさしたり、批判したり、攻撃したりしません。不正義が行われている状況に対しては、たとえ不利な立場になり、身の安全が脅かされようとも、最善を尽くして声をあげます。

 

 

第10のトレーニング: サンガを守り育てる

PROTECTING AND NOURISHING THE SANGHA

 

 サンガの主旨と目的は慈悲と理解の実践につとめることであると知ります。実践のコミュニティを個人的な権威や利益のために利用せず、政治の道具に変えることもしません。精神性を重んじるコミュニティの一員として、抑圧と不正義にはっきりと反対の立場をとります。いさかいのどちら側にも加担せず、状況改善のために力をつくします。すべてを相互存在の視点で見ることにつとめ、私も人もサンガの体をつくる細胞であると考えます。私はサンガの体がまぎれもない一部として、マインドフルネスと集中と洞察を生みだし、自分とサンガ全体を育てます。サンガの一人ひとりは、ブッダという体の細胞でもあります。自ら進んで友情を育て、ともに川として流れ、三つの真実の力ーー慈悲と理解と煩悩を断ち切る力を育てるようつとめ、集合的な目覚めをなしとげます。

 

 

第11のトレーニング:正しく生活の糧を得る

RIGHT LIVELIHOOD

 

 環境と社会に対しておびただしい暴力と不正義が行われてきたことを知り、人類と自然を害するような仕事には就きません。地球上のすべての生きものの幸福に役立つ暮らし方を選ぶことに最善を尽くし、慈悲と理解の理想を実現するようつとめます。世界の経済、政治、社会の現実、生態系と人類の関係を意識し、消費者として、市民として、責任ある行動をとります。天然資源を枯渇させ、地球に害を与え、他の生存の機会を奪うような企業には投資をせずその製品を購入しません。

 

 

第12のトレーニング: いのちを尊ぶ

REVERENCE FOR LIFE

 

 戦争や紛争が大きな苦しみをつくりだすことに気づき、日常生活の中で非暴力と慈悲を育み、相互存在を洞察する眼を養います。平和教育やマインドフルネスの瞑想を広く伝え、家族や地域共同体、民族間、宗教的な集団や世界に、和解をうながすようにつとめます。けっして殺さず、人にも殺させません。自分の思考においても、生活においても、あらゆる殺生を支持しません。いのちを守り、戦争を防ぎ、平和を築くためのよりよい方法が見つけられるように、サンガとともに深く見つめる実践をつづけます。

 

 

第13のトレーニング: 寛容さを育む

GENEROSITY

 

 搾取、不正義、略奪、抑圧が生みだす苦しみに気づき、自分の考えかたや、話しかたや、行動において、寛容さを育みます。人間、動物、植物、鉱物の幸福のために働き、自分の時間、エネルギー、持ちものを貧しい人々とわかち合うことで、慈しみを実践します。私は他に属するものを盗んだり、自分のものとして所有しません。人の所有物を尊重する一方で、人間やその他の生き物の苦しみによって利益を得るような行為を防ぐようにつとめます。

  

 

第14のトレーニング:真の愛の実践

TRUE LOVE

 

(一般在家者向け)

 性的な欲求は真の愛ではないことを知り、渇望による性的な関係性は孤独が癒されるどころか、苦しみ、不満足感、孤立を増すばかりであることに気づきます。家族や友人が認める、相互理解と真の愛にもとづく深く長期的な交際なしには、性的な関係を結びません。心と体がひとつであることを理解し、自分の性的なエネルギーを適切に扱う方法を身につけ、自分と人の、慈しみと思いやり、喜び、すべてを包み込む寛容さを育てます。性的な関係によってその後に起こりうる苦しみにも気づきます。自分と相手の幸せを持続させるためには、お互いの権利と責任を尊重しなければならないことを理解します。子どもたちを性的虐待から守り、カップルや家族が性的なあやまちから破綻するのを全力で防ぎます。自分自身の体を慈悲の心をもって大切に扱います。菩薩の理想を体現するために四種の栄養を深く見つめ、性、呼吸、精神の生命エネルギーを上手に保ち導く方法を身につけます。新しいいのちをこの世界にもたらす責任をはっきりと自覚し、子どもたちが生きる未来の環境について普段から思索を深めます。

 

(出家者向け)

 僧や尼僧の深い発願は、性的な欲求の拘束から完全に離れることによってのみ実現することを自覚し、自ら貞節を守り、他の者たちも同じように貞節を守れるように助けます。孤独と苦しみは、性的な関係ではなく、慈悲と喜びとすべてを受け入れる平等心の実践によってこそやわらぐことに気づきます。性的な関係は僧院の生活を破綻させ、いのちあるものに奉仕する理想の実現をさまたげ、 他を傷つけることを理解します。自分の性エネルギーを適切に世話する方法を学びます。体を押さえつけたり虐待したりせず、たんなる道具として扱わず、慈悲と敬意を持って扱います。「四種の栄養」を深く見つめ、自分の性、呼吸、精神の生命エネルギーを上手に保ち導いて、菩薩としての理想を実践するようつとめます。

徳間書店「ティク・ナット・ハンの幸せの瞑想」

​原文:https://plumvillage.org/mindfulness-practice/the-14-mindfulness-trainings/

​翻訳:島田啓介・馬籠久美子