14のマインドフルネス・トレーニング

プラムヴィレッジの14のマインドフルネス・トレーニングは、菩薩行の実行のために定められた五十八の戒律の現代版です。このトレーニングは単なる教えではなく、現実の生活におけるマインドフルネスの実践です。マインドフルネス・トレーニングを学び、実践することが「インタービーイング」の本質を理解する助けとなります。

第1のトレーニング : 心の開放と公平さ

OPENNESS

 

 狂信と不寛容がつくりだす苦しみに気づき、盲目的な崇拝や、あらゆる教義、理論、イデオロギーは、たとえ仏教でも絶対視しないと誓います。仏教の教えを、慈悲と理解を育てる導きの手段として受け止めます。それは闘ったり、殺したり、いのちを捧げるような教えではありません。多くの狂信は、ものごとを二元的かつ差別的に認識した結果であると理解します。すべてのものを公平な視点と相互存在の洞察によって観るように自分を訓練し、自分と世界に存在する独断と暴力を変えていきます。

 

 

第2のトレーニング: 自分の見方に執着しない

NON ATTACHMENT TO VIEWS

 

 自分の見方への執着や認識の誤りがつくりだす苦しみに気づき、狭い考え方を避け、一時的な見方に縛られないように気をつけます。ひとつの視点に執着せず、学びと実践を通して他の人の経験や洞察を広く受け入れ、集合的な智慧から恩恵を得ます。今自分にある知識は不変ではなく、絶対的真理ではないことに気づきます。洞察は、知識の積み重ねよりも、思いやりをもって耳を傾け、深く見つめ、既成概念を手放すことで生まれます。真理はいのちの中にあります。自分の内やまわりにある、どんな瞬間にも存在するいのちを見つめます。それは一生を通して学ぶことができるものです。

 

 

第3のトレーニング: 思考の自由

FREEDOM OF THOUGHT

 

 自分の考えを人に押しつけることからくる苦しみに気づき、権威や脅迫、金銭、プロパガンダ、洗脳などいかなる手段によっても、子どもを含め、だれにも自分の考え方を押しつけません。他の人の独自性や、信条の選択、決定の自由の権利を尊重します。また同時に、やさしい言葉と慈悲による対話を通して、狂信や偏狭さを変えることを学びます。

  

 

第4のトレーニング: 苦しみへの気づき

AWARENESS OF SUFFERING

  

 苦しみの本質を深く見つめることが理解と思いやりを育てることに気づき、本来の自分自身に戻り、マインドフルネスのエネルギーで苦しみを認め、受け入れ、抱きしめ、耳を傾けることを誓います。できる限りの努力をそそいで、消費によって苦しみから逃げたり、苦しみを隠したりせず、意識的な呼吸と歩く瞑想を実践して、その苦しみの根源を深く見つめます。苦しみの根源を深く理解することが、それを変容させる唯一の道であることを理解します。自分の苦しみを理解できて初めて、人の苦しみがわかります。苦しんでいる人びととともにいるために、会いに行ったり、電話やインターネット、音声や映像という手段などを通して、彼らの苦しみが慈悲、安らぎ、喜びに変わるように助けます。

 

 

第5のトレーニング: 慈悲に満ちた健やかな生き方

COMPASSIONATE, HEALTHY LIVING

 

 真の幸福が安らぎ、心の安定、自由と慈悲から生まれることに気づき、何百万もの人が飢え、いのちを落としていく中で、自分の富を積むことはしません。また、多くの苦しみと絶望をもたらしうる名声、権力、富や享楽を人生の目的としません。食べもの、感情、思い、意識(四食 しじき)を通して、身心を養う方法を深く見つめる実践をします。ギャンブルはせず、アルコールや麻薬から、ある種のウェブサイト、ゲーム類、音楽、テレビ番組、映画、雑誌、書籍、会話にいたるまで、私自身の体と意識や、組織や集団としての集合的な体と意識に、毒をもたらすような製品を取りこみません。自分自身の体と意識、そして家族や社会や地球という集合的なかたちをとった体と意識に、慈悲や健康や喜びを保つような消費を心がけます

 

 

第6のトレーニング: 怒りを世話する

TAKING CARE OF ANGER

 

 怒りがコミュニケーションをさまたげて苦しみを生むことに気づき、怒りが起こったときはそのエネルギーを世話し、意識の奥底に存在する怒りの種を認め、変容させていきます。怒りが起こってきたら、どんな発言も行動も起こしません。そのかわりにマインドフルな呼吸や歩く腹想を実践し、自分の怒りを認め、抱きしめ、深く見つめます。怒りの根源は外側ではなく、自分や相手の心の中にあり、苦しみに対する認識の誤りや理解の不足にあることを理解します。すべてのものが移りゆくという真理(無常)を見つめれば、自分自身と怒りの原因になったと思う相手を、慈悲の眼で見られるようになり、おたがいの関係の大切さがわかるでしょう。誠実な努力(正精進)を実践し、慈悲と理解と喜びと受容をつちかい、自分の怒りと暴カと怖れを少しずつ変えていき、他の人もそうなれるように助けます。

 

 

第7のトレーニング:今ここにとどまる

DWELLING HAPPILY IN THE PRESENT MOMENT

 

 いのちがあるのは「今ここ」だけであることに気づき、日常のどんな瞬間にも深く生きるトレーニングをします。散漫さに流されたり、過去の後悔や未来への不安、現在の貪り、怒り、ねたみなどにとらわれないよう努力します。マインドフルな呼吸を実践し、今ここで起こっていることに気づくようにつとめます。自分の内に、身のまわりに、そしてあらゆる状況の中に見いだせる、生き生きとしてすばらしい癒やしの要素に触れながら、マインドフルな生き方を学ぶことを誓います。そのようにして自分の中の喜び、安らぎ、慈しみ、理解の種を育て、意識の変容と癒やしに取りくむことができます。本当の幸せは外的な条件ではなく、何よりも自分の心の持ち方にあることに気づき、幸福になるための条件がすでにじゅうぶんにそろっていることを知って、今この瞬間に幸せに生きられることを理解します。

 

 

第8のトレーニング: 真のコミュニティとコミュニケーション

TRUE COMMUNITY AND COMMUNICATION

 

 コミュニケーションの不足によってつねに分裂や苦しみが生まれることに気づき、思いやりをもって聴き愛をもって話す実践を通して、自分を訓練します。真のコミュニティは、受容的な姿勢と、様々な見解や考えや言葉を調和させる具体的な実践から生まれることを理解し、自分の理解と経験をコミュニティの人びととわかち合い、共通の洞察にたどり着くようつとめます。決めつけたり反応したりせずに、深く聴く態度を身につけ、コミュニティに不和を生み分裂を起こす言葉を使わないようにします。問題が起こったときには、サンガにとどまって自分と相手を深く見つめる実践を行い、自らの習慣のエネルギーを含む、問題のすべての原因と条件(因縁)をたしかめます。仲たがいの一因となったかもしれない自分のあり方に責任をもち、心を開いて交流を保ちます。犠牲者のようにふるまうことはせず、どんな小さないさかいでも和解の道を積極的にさぐり、解決につとめます。

 

第9のトレーニング: 誠実にやさしく話す

TRUTHFUL AND LOVING SPEECH

 

 幸福も苦しみも言葉から生まれることに気づき、誠実かつやさしく建設的に話すことを学びます。喜びと信頼と希望の心を起こさせる言葉のみを使い、自分の心の中と人と人のあいだに和解と平和を育てます。私と相手の苦しみを変容させ、困難な状況から抜け出す道を見つけられるような話し方と聴き方につとめます。個人的な興味からたしかでないことを言ったり、人の関心を引きつけるために話したりせず、分裂や憎しみを生む可能性のある話題にも触れません。本人がいないときにその人の欠点にふれることはせず、自分のものの見方が正しいかどうかをつねに自問して、サンガの幸福と調和を守ります。いつでも、状況を理解し変容させていく意志をもって話します。ふたしかな根拠にもとづいてうわさしたり、批判したり、攻撃したりしません。不正があれば、困難をまねき身の安全が脅かされるようなことがあっても、告発することに最大限の努力をします。

 

 

第10のトレーニング: サンガを守り育てる

PROTECTING AND NOURISHING THE SANGHA

 

 サンガの本質と目的は慈悲と理解の実現であることに気づき、仏教のコミュニティを個人的な権威や利益のために利用せず、政治の道具に仕立てることもしません。スピリチュアルなコミュニティの一員として、抑圧と不正義に対してはっきりと反対の立場をとります。いさかいのどちら側にも加担せず、状況改善のために力をつくします。ものごとを相互存在の視点で見るようにつとめ、自分と仲間をサンガというひとつの体をつくる細胞であると考えます。そのサンガの体の真の細胞のひとつとして、マインドフルネスと集中と洞察を生みだし、自分とサンガ全体を育てます。また、サンガの一人ひとりは、ブッダという体の細胞でもあります。積極的に友情を育て、川のように流れて、三つの真実の力――慈悲と理解と煩悩の超越――をつちかうように実践し、集合的な目覚めをなしとげます。

 

 

第11のトレーニング:正しく生活の糧を得る

RIGHT LIVELIHOOD

 

 環境と社会に対して多大なる暴力と不正義が行われてきたことに気づき、人類と自然に害を与えるような営みをしません。あらゆる力をつくして、地球上のすべての生きものの幸福に役立つ暮らし方を選択し、慈悲と理解への理想を現実のものにするようつとめます。世界の経済、政治、社会の現実、生態系と自分たちの関係性につねに目を向け、消費者として、市民として、責任ある行動をとります。天然資源を枯渇させたり、地球にダメージを与えたり、他の生存の機会を奪うような会社には、投資をせずその製品を買うこともしません。

 

 

第12のトレーニング: いのちを尊ぶ

REVERENCE FOR LIFE

 

 戦争や紛争によって大きな苦しみが生まれることに気づき、日常生活の中で非暴力と慈悲を育くみ、相互存在への洞察を養い、平和教育やマインドフルの瞑想を推進し、家族とコミュニティと民族的・宗教的な集団や世界に、和解を促進することを誓います。けっして殺さず、人にも殺させません。自分の思考と生活によって、いかなる殺生の行為も支持しません。いのちを守り、戦争を防ぎ、平和を実現するためのよりよい方法を見つけるため、サンガとともに深く見つめる実践をつづけます

 

 

第13のトレーニング: 寛容さを育む

GENEROSITY

 

 搾取、社会的不正義、略奪、抑圧による苦しみに気づき、自分の考え方、話し方、行動において寛容さを育くむことを誓います。人間、動物、植物、鉱物の幸福のために働き、自分の時間、エネルギー、持ちものを貧しい人びととわかち合うことで、慈しみを実践します。盗んだり、他に属すべきものを所有したりしません。人の所有物は尊重しますが、人間やその他の生きものの苦しみから利益を得るような行為を防ぐようにつとめます。

  

 

第14のトレーニング:真の愛の実践

TRUE LOVE

 

(一般在家者向け)

 性的な欲求は真の愛ではないことに気づき、渇望にもとづく性的な関係性は孤独を癒やすことはなく、苦しみ、不満足感、孤立をさらに深めることに気づきます。家族や友人から認められた、相互理解と真の愛と長期にわたる深い関係なしには、性的な関係を結ばないことを誓います。体と心がひとつであることを理解し、自分の性的なエネルギーを適切に扱う方法を身につけ、自分と人のために、慈しみと思いやり、喜び、寛容さを育てます。性的な関係によって引き起こされかねないその後の苦しみに気づきます。自分と相手の幸せを保つためには、自分と相手の権利と義務を尊重しなければならないことを理解します。全力を尽くして、子どもたちを性的虐待から守り、カップルと家族が性的あやまちから破綻するのを防ぎます。自分の体を思いやりと尊重の心で扱います。四種の栄養※を深く見つめ、菩薩という理想を体現するために、生命エネルギー(性、呼吸、精神)を大切に使う方法を身につけます。新しいいのちをこの世界にもたらす責任に深い気づきを向け、子どもたちの未来の環境についてつねに深く考えます。

 

(出家者向け)

 僧や尼僧としての深い志は、性的な欲求の拘束から完全に離れなければ実現しないと気づき、貞潔を守り、他の人びとがおたがいを守るようつとめます。孤独と苦しみは、性的な関係によってではなく、慈しみと思いやりと喜びと受容の実践によってのみ軽くなることに気づきます。性的な関係は僧院の生活を破綻させ、いのちあるものに奉仕するという理想の実現をさまたげ、他を傷つけることを理解します。自分の性エネルギーを適切に世話する方法を学びます。自分の体を押さえつけたり虐待せず、たんなる道具として扱うことなく、慈悲と尊重の姿勢で接することを誓います。「四種の栄養」を深く見つめ、自分の性、呼吸、精神の生命エネルギーを保ち導いて、菩薩としての私たちの理想を実現するようつとめます。

 

※四種の栄養 食べもの、感じ方、思い、意識のこと

​原文:https://plumvillage.org/mindfulness-practice/the-14-mindfulness-trainings/

​翻訳:島田啓介・馬籠久美子

MINDFULNESS PRACTICE

BY THICH NHAT HANH 

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ノーベル平和賞の候補にもなった禅師/詩人/平和活動家 ティク・ナット・ハン師のマインドフルネスの教えを実践する仲間(=サンガ)のサイトです。

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